ゲームにおける勝利条件についてのメモ

どうも、寒くなると試験を思い出す、四扇イドラです。

 

最近、競馬のほうの予想やら何やらに時間や労力を割きがちな僕ですが、そこで現れた悩みがゲーム全体についてもいえそうなので、ここに書いておこうと思います。

役には立たなそうな雑記ですが。

 

まずはその悩みについて書きます。

すなわち「前走の成績をどのくらい考慮してよいか」ということです。少しわかりやすく説明しましょう。

競馬に出てくるような競走馬は、多くの場合は生涯で何回もレースに出てきます。レースで勝てばよりレベルの高いレースへと進み、そうでなければ同じレベルのレースに出続けることになります。

と、いうことで、レースを予想する際には、そこに出てくる馬の過去のレース成績を参考にすることになるわけです。例えば、前ギリギリで負けているから次は勝てそうだな、とか、レベルの高いレースに来て勝ててないから厳しそうだな、とか。

ここで、前のレースをどのくらい、あるいはどのように考慮すべきか迷うわけです。

 

前のレースで2着だった場合、(1着の馬は上のレベルに行ってしまいますから)今回は勝てそうというのが素直な評価です。しかし、そのレースレベル全体が低かったらどうでしょう。着順はいいけど、タイムが悪ければ減点でしょうか。しかし、競馬は他の馬よりほんの少しでもはやくゴールすれば勝てる競技です。そうだとすると、レースレベルに合わせて走って、最後少しだけ出し抜こうとしたらミスをした、なんてことも、十分にありうるわけです。

 

この問題の解決は、別の場所で考えることにしましょう。ここで取り上げたいのは、競馬は「よいタイムを出すことではなく、他の馬より前でゴールすることに、その本質がある」ゲームだということです。

 

少し、話を変えましょう。

先日行われた、大学入学共通テスト(旧センター試験)を考えます。まあ厳密にはゲームではないんですが、通ずるところがありますのでご容赦ください。

大学入試における共通テストのスコアの使い道は主に2つあります。

1つめは国公立試験の1次試験としての使い方。これは出願の際に共通テストのスコアを提出し、場合によっては足切りの基準となりつつ、大学ごとの2次試験のスコアと合算されて最終の合否に反映される場合。

2つめは私立試験の共通テスト利用入試としての使い方。これは、共通テストのスコアのみで合否が判定される場合です。

他にもさまざまあるかもしれませんが、ここではこの2つを比較します。

 

後者においては、出願者のうち、共通テスト利用入試の募集人数以内の順位に入っていれば合格できます。例えば募集人数100人であるならば、出願者のなかで100位以内ならいいわけです。

ゲームと違って入学後のあれこれはあれど、とりあえず合格という点では、1位だろうと、50位だろうと、100位だろうと関係がないわけです。点数に置き換えれば、満点を取ろうと、合格者最低点を取ろうと、関係がないわけです。

 

しかし、前者においてはどうでしょうか。確かに足切りを突破するだけのスコアがあれば2次試験に進めますが、共通テストのスコアも最終成績を左右するわけですから、何点でも関係がないなどとはいえません。

(最終スコアが募集人数の順位以上であればよいわけで、その点では後者に合流しますが)共通テストの段階では、できるだけ高いスコアを出すことに価値があることになるわけです。

 

このように、ゲームには一定の順位を取ればよいものと、できるだけ高いスコアを目指すべきものとがある、という話です。

 

 

さて、ここまで読んだところで、ご不満を抱かれる読者もいらっしゃることでしょう。

すなわち「高いスコアを出せば高順位となる以上、その2つがあるとして何の問題があるのか」と。これはかなりごもっともで、前述の試験の例を筆頭に多くの場合においては高スコアを目指せばよいという結論になります。

 

では、そうならない場合は何か。

それは、高スコアを目指すことにリスクがある場合、です。

 

せっかくですから、競馬の例を出しますと、必要以上に速いタイムで走らせることは、その馬の怪我を誘発しますし、スタミナの消耗は次レース以降に悪影響となり得ます。もし勝てるのであれば、できるだけ楽なタイムで走らせるほうが得、となるわけです。

他にも、ミスのリスクがあるモータースポーツもこの場合でしょう。あるいは点数を取りに行って失点につながるアメフトやサッカーなどもこれでしょう。そうやって考えると、意外と少なくないことに気づきます。

 

そして、問題は、プレイヤーに異なる次元で、それぞれ別のインセンティブが与えられている場合です。

例えばこんなゲームを考えましょう。

5人対5人で銃撃戦をするラウンド制のFPSゲームです。勝敗については先に5人全員を倒せばラウンドを取得し、過半数のラウンドを取得した時点で勝利とします。

ここまでのルールでは、2チームなのでピンと来ないかもしれませんが、前述でいえば前者の、スコアが問題とならならいゲームになります。過半数のラウンド取得で勝利ですから、全ラウンドを取得する必要はないし、ましてや個々人のキル数等のスコアは全く問題となりません。

ここに、「個々人の勝利報酬はキル数に応じて与えられる」というルールをつけ足してみましょう。

このルールによって、個々のプレイヤーにおいて、勝利報酬という観点からはより高いスコアを取ったほうが良いゲームとなるわけです。

ところで、FPSゲームではキルを取りに行こうとすると逆にキルされることも多く、チーム戦においては有利な状況がひっくり返るなど大きなリスクがあります。

したがって、合理的なプレイヤーにとって、勝つためには引いて陣形を組むなどして安定的な方針を採るべきだが、勝利報酬を増やすためにはキルを取るために積極的な行動を取るべき、という勝利/報酬という異なる次元において別のインセンティブが与えられることになります。

 

とくにチーム戦において、このような異なる次元において違うゴールが設定される状況を、僕は好みません。すなわち、価値観のすり合わせをしなければならなくなるからです。上記例では、究極的には個人戦と考えて負けもやむなしとする考え方も、勝ち負けが優先だから多少の報酬上の損はやむなしとする考え方も、ゲームのルールと矛盾しません。しかし、両者の考え方は、その言動に大きな違いをもたらし、一方ないし両方が損をするような場面が訪れます。あまり楽しそうな場面ではないですよね。

 

あるいは逆にいえば、とくにチーム戦において、理解しがたい行動を取るプレイヤーがいるのだとしたら、勝利条件についての認識(重みづけ)が異なるだけ、なのかもしれませんね。

 

ゲームの目的は明確であるべき、という僕の好みからすれば、ゲームの勝利条件が順位とスコアのいずれであるかくらいは、はっきりしていてほしいという話でした。

 

追記

前述のような、個人成績による報酬というのは、しかし有意なルールである側面も否定できません。例えば、勝利に貢献するインセンティブを与えるつもりでルールが設定されていることが一般的であるように。

よりわがままを言えば、すなわち個人に対する報酬が、チームの勝利に必要な要素を過不足なく反映して与えられれば、この問題は生じないのでしょう。囮になる、情報を取る、敵がこない方を守っていた、などなど。まあ、あまりにも無理難題でしょうが。

 

この辺りは、ゲームシステムを考える機会が訪れるなんてことがあったときに、よりきちんと悩むことにしましょう。

 

追記の追記

順位という目標とスコアという目標が同一の次元にあり、統一的なルールになっているゲームの麻雀があります。順位点という計算方法で順位をスコア化させるというルールはかなり画期的で、順位についての駆け引きを維持しつつ、あくまでスコアを指標とすることでリスクを取る意欲を減退させないという、かなり良いシステムだなと思います。