【第1回】吊る -人狼ゲームにおける選択を眺めて-

どうも、オレンジのボールペンだけ消費が激しい、四扇イドラです。

 

さて。話題は人狼ゲームに戻りまして。

本稿から「人狼ゲームにおける選択を眺めて」というテーマで全4回ほど書いていきたいと思います。

 

自律的な会話でそのほとんどが進行していくというゲームの性質上、総ての瞬間において選択しているといえばその通りなのですが、今回は目に見えてする選択、あるいはゲームのシステムとして用意されている選択をピックアップしていきます。

ゲームシステムに組み込まれているということは、重要な役割を担うということであり、また何らかの確定的な情報を得られるという点で特異な要素になってもいます。

あるいは他人の選択から思考が伸びるということもあるでしょう。

 

というわけで、選択の瞬間を概覧しつつ、思考を整理していきたいと思います。

あくまでも整理であって、何か高度なテクニックを披露するわけではありませんから、当たり前に感じる人も多いでしょう。

ここでは、あえて当然の思考を整理的に列挙することで、迷走したときの道しるべとしつつ、上達の踏み台にしていただくことを目標としたいと思います。

 

なお、選択の根拠づけ、その重みづけは人によりますから必ずしも以下のことを考慮しなければならないということではありません。

また、両陣営とも相手が考えるであろうことをさらに考慮する(裏をかく)形で勝とうとするわけですから、以下の思考に従えば正しい選択に至るというわけではないことを事前にことわっておきたいと思います。

 

13人3狼1狂1占1狩1霊を想定しており第三陣営などは考慮していないことをお伝えしたところで、そろそろ本題に入っていきましょう。

 

誰を吊るかという選択

第1回の本稿では、プレイヤーの全員が直面する「誰を吊るか」という選択を眺めていきます。

正確にいうならば一人ひとりに許されているのは「誰に投票するか」という選択に過ぎないのですが、システム上吊りたい人に投票することが原則となっていますから、誰を吊るかという目線で話を進めていきます。(例外については後述します。)

 

さて、言うもさらな話ですが、吊るという行為は極めて重要です。というより人狼ゲームの最も根幹にあるのが吊るという行動なのです。そのことは、市民側の勝利条件が「人狼を吊りきる」ことであることからも明らかかと思います。

したがって、市民側としては吊るという選択において正しい択を選び続けることができれば絶対に勝てることになります。

 

あえて付言するならば、役職を持たない市民(と狂人)にとってゲームシステムに関与できる唯一の機会でもあります。

視点を変えて表現すれば、市民と市民のフリをする人外とを見極める数少ない手がかりの一つなのです。

 

人狼を吊ることが市民の唯一の勝利ルートであることと、素村(を名乗っている人、以下グレー)の色を判断する大きな要素になり得ることを意識しながら、具体的な考慮要素に進みたいと思います。

 

A.市民の思考

1.人狼を吊りたい

市民側は人狼を吊りきれば勝てるわけですから、人狼を吊りたいというのが最も最初の、そして本質的な願望でしょう。

 

(例えば占い1COで黒を見つけた場合など)人狼であることが実質的に確定している場合には、その人を吊る以外の選択肢は考え難いと思います。

あるいは、人狼が確定しているとはいえないにしても、人狼である蓋然性が高いと判断した場合には、積極的にその人を吊りにいくことでしょう。

 

そういう意味では、吊りの選択は人狼だと思う人一択で、むしろどうやって人狼を見つけるかがゲームの本質である、という反論はあり得ますし妥当な言説だと思います。

が、それでは本稿の意味がなくなってしまうので、人狼がわからない場合を念頭に置きつつ(実際、初日は人狼がわかりようがないですから)、他の考慮要素へと進んでいくことにしましょう。

 

2.人外を吊りたい

1.と違うのは、人外には狂人が含まれていることです。

狂人はいくら吊っても勝てませんから、狂人に縄を使うよりは人狼を吊ってしまいたいのが市民の素直な心情でしょう。

が、狂人を吊れば基本的に吊り縄は減らない(PPのタイミングを遅らせることができる)わけですから、少なくとも狂人ということがわかっていれば吊ってしまっていい、という判断になります。

役職COで破綻した場合などはこの思考が採用されているように思われます。

 

3.狂人以外を吊りたい

あまり想定しづらい思考ですが、実際は占い3COの場合にわりと見かけます。

どういう発想かと言えば、(霊媒師がいる場合に)吊った人の色を見てから情報を整理したいということになります。

真か狼の占いを吊って色を見れば、その占い結果が真実かどうかがわかりますので。

狂人を吊ってしまうと霊結果として白が落ちた結果、間違った思考を伸ばしてしまったり、レアケを追って思考が濁る、ということを避けたいという意図でもあるでしょう。

 

なお、この発想は霊能がいることが前提となっていることに注意が必要となります。

 

4.ローラーを完遂したい

2-2盤面(占いと霊能がそれぞれ2CO)で、霊能から手をかけた場合。

2日目の昼には昨日吊られなかった霊能を吊るかどうかという選択が生じます。

 

レギュレーションから霊能が真狂であると考えるなら人狼を吊りたいという目的には合致しません。また、残ったほうの霊能に真目が高いと考えるなら、狂人を吊るということにすらならない可能性が高いことになります。

それでも、ローラーは完遂することにはメリットがあります。

 

それは、思考が整理されるというメリットです。

もちろん、プレイヤーの感覚が間違っていて狂人を信じていたときのリスクを回避できるというメリットもありますが、それ以上に思考上のコストを削減できるのです。

ないとは思いつつ、残った霊能の結果が嘘だったら、その霊能とラインがつながってるのは誰か、初日の投票はどうだったか、そういう思考を辿ってしまうことも、おおいにあるでしょう。

そして、真の霊能を後々疑った結果、グレーの精査ができずに負ける。こんなことなら霊ロラしておけばよかった。そういうこともあり得るわけです。

 

もちろん「真とおいた以上は疑わない」をできる人でありかつ役職の真偽が付く人には不要でしょうが……。

 

5.最終盤面に行きたい

2COの占い師が残っていたりすると占い結果によってラインが生じ、あるいは占い師がいない場合でも議論のなかでラインが見えてくるものです。

さて、2本以上のラインが存在する場合、どちらかに決め打ちするとゲームの終局が早く訪れることになります。(人狼のラインを吊れた場合は勝利が訪れ、吊れなかった場合はPPが訪れます。)

 

そこで、市民の心情としては、同陣営じゃなさそうな二人を残し、胃痛ポジ(両方から白いとされて最終的な決断をする人)とあわせて3人で最終日を迎えたいと考えることがあります。

というのも、日数が増えれば噛みや占い結果、あるいは投票先といった情報が増えて最終判断の参考にできる可能性が生じるのです。

それらの情報には人狼の作出したものも含まれて、結果的に勝ちに近づくかは微妙なラインですが、心情としては理解できますし、共感できるのではないでしょうか。

 

ということで、対立する人たちをバランスよく吊って時間を最終日を目指すというのも吊りの選択肢の一つです(その極端な典型が役職者のローラーですが)。

 

6.例外としての投票

以上、吊りたい人に投票するという原則のもとで5つのシーンを縦走してきましたが、例外的な投票についても触れていきたいと思います。すなわち、吊りたいわけではないが投票するというケースについて。

 

・真役職が指定した場合

人狼ゲームが即興のチーム戦である以上、同陣営でのチームワークが必要な盤面も訪れます。真が確定した役職者の指定があった場合、あえて逆らう必要がないので、これに従って投票するということがあります。

民意が固まっている状態で、余計な考察の必要を生じさせないためにこれに従う場合がありますが、この場合も同様に考えていいでしょう。

 

・票を捨てる場合

一斉投票の場合は同数をさけるために、順次投票の場合は後続のプレイヤーに決定権を渡すために、捨て票としての投票をするということがあります。

 

・意思を表明する場合

民意が誰か特定の人を吊ろうというときに、その流れにあえて従わず、自身の怪しいと思う人に投票するということがあります。その選択過程は人狼と思う人への投票と同じですが、吊れると思っていないのに投票する点に考慮すべき差異があります。

考察のきっかけになるというメリットの反面、余計な情報となる可能性があるので難しいところです。

 

・誰かを守る場合

黒いとまでは思っていないが、より白い人に投票が集まるのを避けるために投票することがあります。この場合、投票先への積極的な吊り感情はないですが、相対的にみれば、人狼と思う人への投票と同様に考えてよいと思われます。

 

7.Rebuild

ここまで具体的なシーンを羅列してきましたが、投票における思考の整理としては不十分ですので、ここであらためて再構成したいと思います。

シーンにこだわらず、投票に臨むプレイヤーの考えていることをまとめると、以下に集約されそうです。

人狼(人外)を吊りたい

直接勝利条件を満たしに行こうとする思考です。前述の通り、人狼を探そうとする思考は、総じて人狼を吊ろうという(当然の)思考と表裏でしょう。

この場合、どうしてその人が人狼だと思ったのか説明することが、イコール投票の根拠(思考過程)を説明することとなります。

②情報が欲しい

その人を吊ることによって情報を得ようとする思考です。霊能結果が情報の筆頭ですが、その後の噛み位置や占い先なども情報となりえます。あるいは、最終日を目指すのも情報を増やすためといえます。

いずれにせよ、どんな情報が欲しくてその投票をするか、説明できると良いでしょう。

③盤面を整理したい

その人を吊ることによって盤面を整理して思考を伸ばそうとする思考です。どういう意味で盤面が整理されるか説明するとともに、その選択をした以上はその後の思考を伸ばすことが求められるでしょう。

④白くなりたい

投票によって自分が白くなろうとする思考です。白くなると他の人の思考が伸びやすくなりますし、人狼に圧をかけることができます。が、人狼もまた白くなろうとするものですから、潜伏しようとする人狼と自分との差異、他の白要素も作っておけると良いでしょう。

 

こうやってまとめると、これって人狼ゲームのあらゆるに共通するし、これが総てのような気もしますが……。

まあ、投票も議論中と同じかそれ以上に考えるんだよということで。

 

B.人狼の思考

さて、こうして市民と人狼とを分けて章立てしたのですが、人狼のときに考えることのほとんどは書いてしまいました。

というのも、人狼人狼に特有の思考で選択してしまうと、そのことをもって市民陣営でないことがバレてしまうことになります。これは人狼にとって嬉しくありません。

したがって人狼の動機のほとんどは”市民らしく”行動することといえます。

そうだとすれば、上記市民の思考をトレースしたうえで、それに従った投票をしつつこれを開示することが人狼にとって望ましいという結論が導けましょう。

 

(とはいえ、人狼が市民と全く同じ行動をすると、低くない確率で身内切りをすることになります。その身内切りが上手くいけばラストウルフが縄のかからない位置に逃げられますが、躊躇が露呈して失敗すると簡単に全狼が捕捉されてしまうので悩みどころです。

この辺りの話は、人狼の戦略としての(最)適解とも絡んで難しいので、ここではご容赦ください。

あるいは、人狼陣営が頑張れる場面は投票前の議論であって、市民の思考を市民を吊りたくなる方向へといかに誘導できるかが勝負ということなのかもしれません。)

 

ということで、人狼の思考をまとめると

①市民に馴染む(上記思考を開示できるようにする)

②市民を吊る

ということになりましょう。

 

……これまた人狼が常に考えていることのような気もしますが。

 

小括

以上、投票をシーンごとに概覧しつつ、思考の整理をしてみました。

吊り/投票が人狼ゲームの根幹であることに由来して、あるいはこれと議論が直結していることに由来して、ゲーム一般における思考のパターンとほぼ一致してしまった気がしますが。

この拍子抜けな文章をもって吊り/投票の重要性と、投票にも根拠(思考過程)とその開示が必要であるという結論の証左としていただけたらと思います。

 

次回は人狼にのみ許された特権である「噛み」について概覧していきますので、ぜひそちらもご覧ください。

 

追記という名の重要なお願い

人狼を遊んでいるうえで(無意識に)パターン化してしまい、うまく言語化できていない思考過程/忘れてしまっている思考過程がある、ような気もしています。

ので、「自分はこんなこと考えて投票してまっせ」という方がいらっしゃれば、教えてほしいと思ってます。お願いします。