ゲームする人々
さて。ここに2人の少年がいる。
盤をはさんで真剣な表情である。何かゲームをしているようだ。
いま、先手だった少年が悔しそうな表情を浮かべた。どうやら彼が負けたらしい。
なるほど、ゲームには勝者があり、敗者がある。これは動かしがたい事実である。
しかして2人はずいぶんと楽しげである。
あどけない彼らにとっては、勝ちの喜びも負けの悔しさも、楽しいゲームの一部でしかないのだろう。
彼らはいくらかの感想戦をして、ふたたび勝負を始めるのだった。
さて。ここに2人の少年の親がいる。それぞれ自分の子供を応援しているようだ。
その表情の真剣たるは、少年たちに勝るとも劣らない。
いま、先手だった少年の親が悔しそうな表情を浮かべた。自分の子供が負けたらしい。
なるほど、ゲームには勝者があり、敗者がある。これは動かしがたい事実である。
しかして2人はずいぶんと誇らしげである。
勝ちも負けも、成長する糧にできると、そう信じているのだろう。
さて。ここに通行人らがいる。白熱した少年らの対局を観にきたらしい。
その表情はまちまちである。真剣な表情のもの、暖かい視線をむけるもの、薄ら笑いをうかべるもの。
いま、歓声があがった。どうやら勝敗が付いたらしい。
なるほど、ゲームには勝者があり、敗者がある。これは動かしがたい事実である。
しかして、いや、彼らの表情はまちまちであった。満足げなもの、悲しそうなもの、あるいは、憤慨しているもの。
彼らは何を思って、そのゲームを見守るのか。
ところで。
そのゲームはマルバツゲームであった。
そのゲームは禁じ手のない五目並べであった。
そのゲームは将棋であった。
はたしてその表情はいかなるか。
横断する人々
さて。ここに1人の成人がいる。
目の前には一方通行の車道。
横断歩道はないが、その成人はここを渡りたいらしい。
一方通行にしては幅の広い道で、車両が速度を落とすとは限らない。
その人は左右を確認し、何も来ていなかったので歩き始めた。
果たして彼は、無事に道を渡り終えた。
さて。ここに1人の成人がいる。
目の前には一方通行の車道。
横断歩道はないが、その成人はここを渡りたいらしい。
一方通行にしては幅の広い道で、車両が速度を落とすとは限らない。
その人は右を確認し、車が来ていなかったので歩き始めた。
果たして彼は、左から来る自転車と衝突した。
部屋にいる人々
さて。ここには誰もいない。
だだっ広い部屋はがらんとしており、誰の気配もない。
唯一設置されたテレビからは、何かのスポーツだろうか。
白熱する実況の声が反響する。万人の注目を集めんがために。
しかしながら、そのシーンを観る人は、そこにはいない。
それでも試合は進んでいく。
親切な解説の声がこれに続く。万人の理解を助けんがために。
しかしながら、そのシーンを観る人は、そこにはいない。
それでも試合は、進んでいく。