超高速ディプロマシーの超軽率予想

どうも、高速道路では一番左の車線を走る、四扇イドラです。

 

※ディプロマシーは1900年代初頭を舞台としたゲームとなっております。

以下、これにかかわる名称、表現はすべてゲーム上のものであり、実在する固有名詞、歴史上の事実等とは一切関係がありません。

 

今回は、poezさん監督のもと開催されます超高速ディプロマシーの予想をしていきたいと思います。

というのも、こちらの企画は外交時間5分、命令書記入、提出が各1分と通常のレギュレーションよりかなり短くなっております。

越山さんの制作されたツールによってスムーズに進行できるとしても、時間が足りなくなることは必至でしょう。

そんな特殊な環境が各プレイヤーに与える心理的、物理的影響を想像してみようという魂胆です。

僕自身は特殊レギュでプレイしたことがないので超軽率な予想となってしまいますが、超高速ディプロマシーを楽しむ一助にしていただければと思います。

 

なお、ここではプレイヤーのみなさんの個人的な要素(スキル、関係、癖など)には言及いたしません。

 

 

外交時間が短くなるということ

さて。通常のレギュレーションで15分(初ターンに限り30分)認められている外交時間ですが、正直15分でも足りません。

自国と接する国との交渉はもちろん、遠国との情報交換もしたいですし、具体的な支援も含めて詰めていくとあっという間に15分が経過しています。

そんな外交時間が5分になれば、本来話したいことのいずれかを削ることは不可避でしょうから、何を捨てるかがゲームの行方を左右することになりそうです。

 

密談する相手が減る

真っ先に思いつく影響が、密談する相手が減ることかなという気がします。

密談を2回にわけようと思うと、呼び出す時間や相手を待つ時間も考慮すると1回あたり2分強。簡単な取り決めくらいはできるかもしれませんが、細かい情報のやりとりは難しいと考えるべきでしょう。

 

さて、密談する相手が減るととどうなるでしょうか。

 

良いことから指摘しますと、自分の行軍予定が漏れるということは減りそうです。

そもそも他国に自分の作戦を伝える機会が減りますし、それが誰かを経由して漏れるということは少ないでしょう。

逆にいえば、相手の行軍予定を訊きだして対応するということもできなくなるわけですから、行軍の読み合いがよりジャンケン的になると思われます。

 

次に複数戦線の維持が困難になりそうです。

すなわち、接敵する勢力が増えると、停戦交渉、離反勧誘などに使える時間が足りなくなります。もとよりユニット数の関係から難しかった複数戦線の展開が、より厳しいものとなりそうです。

それは、裏を突くインセンティブになりえますが、ちょうどいいタイミングで裏を突く余力のある国があるかといえば、それも難しそうです。

結局、序盤はとくに、東4国と西3国とでそれぞれの勢力争いに集中することになりそうです。(イタリアの西レパント、ロシアの北方システムはそれぞれ外交上の基盤を作る時間が足りずに選択しづらいように思われます。)

 

敵対関係がはっきりすることにもなるでしょう。

強い同盟を結んで行軍するなら多くの場合、両国間で移動支援や輸送命令をしあうことになります。細かい指示のすり合わせをするなら、思いのほか時間が取られたりするものです。

孤軍奮闘が実りにくいこのゲームで、短い時間を真っ先に裏切り相手のために使うというのは考えにくいので、最初に話しに行った相手=友好関係を維持(ないし構築)したい相手、話さなかった相手=敵対関係にある相手として、関係性がより明白になるでしょう。

 

損ねた信頼を取り繕う時間がなくなる

友好関係にある国が不穏な動きをした場合、外交時間のはじめに呼び出してその意図を訊き、友好関係を継続できるかを検討することになるかと思います。

そして不穏な動きをした側も正直に「裏切ります」とはいわないでしょうから、何かと言い繕って、まだ友好関係が維持出来ると説得する(あるいは騙す)ことになるでしょう。

しかし、5分しかない時間を、自分に対して裏切りのような行為をした相手にさく余裕があるでしょうか。もしその相手が確定的に自分を裏切るつもりなら、その時間は水泡に帰し、孤軍奮闘しなければならない時間がやってくるわけですから。

周辺の、より頼れそうな国に援助を求めたり、裏にいる国に相手を攻めるようそそのかす、というのが妥当な時間の使い方でしょう。

もっとも、他に頼れる国がないのなら、この限りではありませんが。

 

遠い未来の話をする余裕がなくなる

外交時間では、友好関係を維持、構築したい相手、あるいはそう思わせたい相手に対して、様々な思考、思惑を開示するものです。

このターンの行軍予定はもちろん、次ターンの動き、増産フェーズにおける選択、あるいは2年後3年後の展望を話すこともあるかもしれません。

しかし、5分しかない外交時間では、来るかどうかもわからない未来の話をする余裕は(少なくとも心理的には)あまりないように思われます。

このターンの支援が上手くいくか、その方がはるかに重要なのですから。

 

では、未来の話をしないことがゲーム展開にどう影響があるでしょうか。

 

考えられることの一つは、相手の腹心に気づきにくくなるという影響です。

将来の話を考えれば、いつ自分と利害が一致しなくなるのか何となく感じ取れることがあります。もちろんうまく騙されることも往々にしてありますが。

しかし、今の話だけをするならば、そもそも騙す騙さないという次元ではなくなります。この協力が自分にとって利のあるものか、そこに主眼が置かれることになりましょう。

 

細かい行軍のすり合わせこそ失われない

上記に話と同様に、ふんわりと協力を約束し、共通の敵を作り出し、あるいは情勢の分析をする価値は相対的に低くなるでしょう。

次の命令記入フェーズでいかなる命令をするべきか、それを決定するための5分としなければなりませんから。

 

そうだとすると、もはや外交のはじめに密談をしたことをもって友好関係の証として、会話の内容はもっぱら具体的な行軍のすり合わせになるだろうと予想されます。

すなわり、「黒海は1902年末までは合意SOで」とか、「ノルウェーのスウェーデン入りをデンマークで支援してほしい」とか、そういう会話が展開されるのだろうと思われます。

 

プレイヤーの選択肢としては外交時間にすり合わせた行軍を履行するか、これを裏切って別の行動をとるかということになりそうです。(その会話の後で、残り少ない時間を敵対する勢力に使えば、通常のレギュレーションの場合よりいっそう怪しまれることになるでしょう。)

 

とすると、裏切りは約束違反の行軍命令という形で訪れますから明白であり、かつ、自力での裏切りであるがためにこれが成功する可能性は低くなるものと思います。

 

が、逆に、だからこそ裏切りが発生しないものと思い込んでいれば、かえってクリティカルな裏切りが生じる余地もあるわけですが。

 

命令記入時間が短くなるということ

ディプロマシーのルールのなかで最も多種のハウスルールが設定されているのが、命令記入時間についてでしょう。

ルールブックによれば5分以内に記入すべきとされていますが、そのルールの複雑性から多少の超過を認めるもの、そもそも長い時間が設定されているもの、書簡形式(メール形式)など記入の制限時間を観念できないもの等々。

いずれも伸ばす方向に修正されており、短くするものを僕は見たことがありません。

少なくとも心理的影響はあるでしょうから、これも検討していきましょう。

 

ミスが生じる

これはまあ、その通りでしょう。

いかに慣れているプレイヤーでもミスはするものですから、制限時間が差し迫っているという心理的圧迫がこれを助長する環境下では、いくぶんかのミスがあることは容易に想像できると思います。

ミスの内容は、プレイヤー個人の注意の分配に依存しますから、これを予想することは難しいので、ここでは深入りしないことになります。(ここでいうミスは予定した行軍の出し忘れ、出し間違いを指します。)

 

とはいえ、まさに懸案の地域についてはこれを特に注意するものと考えられますので、致命的なミスは少ないようにも思われます。

 

迷う時間がなくなる

ディプロマシーをプレイしたことのある人は共感してもらえると思いますが、命令記入フェーズでは、一度命令を記入した後も、これを変更するか迷います。

同盟相手を裏切るかどうか、同盟相手が裏切ってくるかどうか、敵対する相手をどちらにするか、合意をスカすかどうか。

時間いっぱい迷った結果、最初に書いた命令を変更し、あげく痛い目をみる。

そんな経験も何度かあるのではないでしょうか。

 

選択にかける時間が短くなれば、迷う時間も短くなります。

そうすると、最初に書いた命令をそのまま提出することが増え、迷った結果の変更が減るものと想像できます。

 

すなわち、裏切りは決め打ち的になされ(なし崩し的にはなされず)、それ以外の場合は約束が履行される、蓋然性が高くなるでしょう。

 

複雑な行軍は忌避されない

さて、命令記入時間の短さから複雑な行軍は忌避され、シンプルな移動や維持が多用されるかといえば、そうはならないと思われます。

というのも、越山さんのツールでは、外交フェーズのうちから行軍命令を作成し、それを表示しながら外交ができ、しかも命令政策の労力は命令ごとにほとんど変わらない。

されば、複雑な行軍は外交に挑む段階で組んでしまって、これを確認して提出するだけとできますから、懸案の地域においては複雑な行軍も多分に組まれることになりましょう。

 

抽象的なまとめ

裏切りのインセンティブが生じにくくなる?

ここまでの記述から、プレイヤーに裏切りのインセンティブが生じにくくなると考えていることがにじみ出ていたかと思います。

 

裏切り後に他国の協力を得られるという確実性はなく、戦線を拡大するコストだけがかさんでいく。他国との共同で裏切ろうとすれば、事前に察知される可能性が高い。

そうなればゲーム中に発生する裏切りの回数は減ると考えられましょう。

 

行軍効率が重要?

裏切りが減るとすれば外交上の懸念によって状況が覆されるリスクが出るわけですから、行軍効率が重要になってくるのは間違いないでしょう。

同盟によって2か国分のユニットで行軍するのが行軍効率を上げる良策なわけで、そうなるとより同盟を維持するメリットが大きくなるのでしょう。

 

最初の同盟が重要?

同盟は組みたい、しかし裏切りや交渉で同盟を組み替えている余裕はない。そうだとすると、最初に同盟を組むことの重要性が出てくるわけです。

西側3か国で2対1の情勢となったら、これを覆すのはほとんどムリなように思えてくるわけです。

 

共通の敵が滅亡した後は?

以前にも書きましたが、同盟は共通の敵を滅亡させ領土を分け合った後は、これを維持することが困難になります。

通常、同盟のいずれかにとって他に進行する先がなくなるからです。あるいは、新たに共通の敵を選出するとしても、その選択は一方にはメリットが多く他方には少ないということになりがちだからです。

 

そうすると、通常は他の国に新たにすり寄って昨日までの同盟国を攻め込んだりもするわけですが、5分という制限のなかで都合よく周辺国に声をかけられるでしょうか。

 

同盟国どうしで1対1の戦いとなるか、仲良く東西の空白地帯を超えるかの2択になると考えます。そして、そのいずれが選ばれるかは、空白地帯の向こう側の戦況と、両国の配置によるでしょう。

逆に言えば、共通の敵を倒し切ったあとでの力関係を見越して最初の同盟を選択することになりましょう。

 

具体的な予想

まあ、長々とした話はここまでにして、具体的な予想を開示していきたいと思います。

 

最初の同盟

西側は2対1の構造ができるのが自然でしょう(ロシアを抱き込む時間はなく、イタリアをそそのかす時間もないため)。

問題は誰が1になるか。以下、短絡的な思考を開示します。

 

イギリスは陸海の住みわけができて1対1で端をとれるという理由でドイツと組みたい。フランスは背後の壁を有効に使いたいからイギリスを攻めたい。ドイツはフランスと組めば(一緒に西進できるため)長期同盟の余地が大いに残るのでフランスと組みたい。

 

ということで、アシカの日(独仏同盟)が採用されると考えます。

 

東側は2対2になるか、3対1になるか(ロシアには北方システムで西側に首を突っ込めるほどの、イタリアには西レパントをするほどの時間的猶予はないと考えます)。

以下、東側4か国の頭に浮かびそうな考慮要素です。

 

まず、単独で攻防する余地の大きいトルコを抑え込みたい

次に、オーハンを速攻で(西側が決着する前に)落としてユニットを増やしたい

あるいは、1か国が滅亡したあとの2対1の1になりたくない。

そして、大人数(3人)での外交は思惑が錯綜しまとまらない危険がある。

 

ということで、ロシアトルコがジャガーノート、イタリアオーハンがキーレパントを選択すると考えます。(それぞれ外交の制約により裏切りのリスクを下げやすいので通常時より選択のインセンティブがあります。)

 

その後

こうなると、厳しいのはイギリスで、単独で独仏から防衛しきるのはほぼ不可能でしょう。2対2の東側よりも早く決着がつくと考えてよいと思います。

 

とすると、独仏はひるがえって西進すると考えられます(同盟は維持するほうがコストが小さいので)。

フランスが地中海に入ると、イタリアはキーレパントどころではなくなりますから、この時点で東側の決着がついていければ露土に軍配が上がるでしょう。

 

その後は

地中海で仏対伊

大陸中央で独対墺対露(墺は挟撃されていずれ独対露となるでしょう)

トルコはまだ勢力に余裕があればバルカン半島の南側で様子見をし、余裕がなければ挽回の目を追ってロシアかイタリアの裏をとりに行く

 

という経過をたどると予想します。

 

結果

ということで、背後に壁をもったまま進めるフランスが優勝。

次点でロシア、ドイツと続くということで、僕の予想としたいと思います。

 

楽しみなところ

ということで予想してきたわけですが、超高速ディプロマシーの当日が楽しみで仕方ありません。この楽しみを共有すべく、楽しみにしてるポイントを紹介してこの記事を終えたいと思います。

 

・研ぎ澄まされた外交

外交時間が圧倒的に少ないと思っていますが、ふたを開けてみればプレイヤーのみなさんが5分で十分外交できるという可能性は大いにあります。

1分くらいで話をまとめて次から次に密談を行うという早業を目撃できるかもしれません。最低限の言葉で意思疎通する技術を楽しみにしたいと思います。

 

・ミスから始まるドラマ

時間が短いがためにミスする可能性があることは書きましたが、このミスをむしろ楽しみにしたいと思っています。

というのも、ミスは思いがけないドラマをもたらしますし、想像を超えたシーンにつながることもあります。あるいは、かえって自分に有利になったり。

 

・滅亡を迎える国々

時間が全体で3時間ですから、心理的には国を亡ぼすことへの抵抗も小さいのではないかと思っています。だからこそ、ドラスティックな攻防がみられるんじゃないかと期待しています。

ふだんはあまり見られない展開がみられるといいですよね。

 

・1901年春の外交フェーズ開始

なんならここがもっとも熱い瞬間になるんじゃないでしょうか。

最初に密談に行けなければ、下手すれば誰とも外交できないまま5分が経過してしまう。各々の焦りや交錯する思惑が一斉に現れるのが最初の外交フェーズでしょう。その数秒のわちゃわちゃを楽しみにしています。

 

 

あるいは、この軽率な予想からかけ離れた展開をこそ、楽しみにしたいと思います。

                                     以上